工場の機械設備や装置等、不動産に対して「動産」に属する資産の評価です。
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工場の機械設備は、一般的には「動産」ですが、「工場財団」等を組成する場合には、不動産の範疇に入ります。
しかし、今、それ以上に重要なことは、「工場財団」等を組成しなくとも、「事業用の資産」として、不動産と一体で経済価値を把握し、評価されていることです。事業用不動産の評価に関連して、また、M&A、会社分割等に関連して、機械設備の評価が重要性を増しています。また、動産担保融資の観点からは、機械設備等の固定資産以外にも、製品になる前の半製品であったり、食べ物である魚等、棚卸資産が評価の対象となることもあります。
工場の機械設備等の評価は、工場という「事業用不動産の評価」の一部といえます。
但し、「事業用不動産の評価」の一部であっても、機械設備等は「動産性」を失わないという特性があります。工場にある機械設備は、それが一体で生産設備として機能するという側面があると同時に、その生産設備が廃止された場合にも、解体移転され、別個の場所で新たな命が吹き込まれるからです。
福島県にあった半導体工場が米国のTI(テキサス・インスツルメント)に買収され、その機械設備の一部が、米国本土に移転されるというようなことは、今は、日常的なことであり、日本の中古の機械、車等がアジアやアフリカの国にもてはやされていることが新聞やテレビで頻繁に紹介されています。
つまり、機械設備等の評価に当たっては、機械設備の有機的な連携によって生み出される価値に基づく評価に加え、それぞれの機械設備が個々に持つ、第2、第3の人生における個別の価値に基づく評価の双方を行う必要があるのです。
◎工場及び機械設備等の評価とデューデリジェンス
機械設備等の評価に当たっては、物件数が相当に多いことが普通でしょう。また、土壌汚染やアスベスト、耐震構造の調査の問題もあり、工場の機械設備を含む事業用資産の評価にあっては、証券化不動産の評価と同様に、評価の対象となった不動産(土地や建物)や機械設備等の詳細な確認、つまり、デューデリジェンス(※)が要請されます。しかも、短期間に調査を遂行することが要請されるのが普通です。機械設備や事業評価、事業再生等に関する評価は、何といっても、投資意思決定を早く正確に行うための支援業務であるからです。
そのためには、そのような評価に対応できる組織を持ち、スタッフを養成しておく必要があるのです。
※デューデリジェンスとは、最適な意思決定のために行う詳細な調査・確認業務のことであり、
@物理的な側面、即ち、対象となった資産等の質と量に関する調査・確認
A法的な調査・確認(公法的な適合性と賃貸借等の利用権、訴訟リスク等)
B経済的な調査・確認(マーケットの状況、過去の収支の状況・将来の予測等に関する調査等)
を行い、投資リスクの洗い出しと、CF表作成の支援を目的として行われるものです。
※機械器具が加わった場合の事業用不動産、即ち、工場の収益価格の考え方は、CFを捉え、その現在価値の総和を求める点では、一般の事業用不動産と全く同じです。但し、
@経済のグローバル化で、収益の変動が激しく不安定化している中で、説得力ある収支を描く必要があること、
A本社経費やのれん代、土壌汚染、環境対策等、工場に特有の考慮項目があること、
B収益期間終了後の出口戦略として、引き続き工場としての使用を前提としたり、場合によっては、工場取り壊し更地化して再開発したり等、様々なシナリオの想定とシミュレーションが必要である等、
一般の事業用不動産の場合と異なる点が多くあります。
また、事業再生等に係る鑑定評価の場合には、再生計画の作成に当たる弁護士や公認会計士等の協力を得る必要もありますが、そのような計画がない段階で評価が要請される場面もあり、日頃から自己研鑽に努めることはもとより、他の専門家とのネットワークを形成しておく必要があります。
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